ピンク色の街、マラケシュ

マラケシュの街全体はピンク色に染まっている

モロッコの古都マラケシュを歩くと、最初に心を奪われるのは「色」かもしれません。にぎやかな音や香辛料の香り、呼び込みの声やミントティーの湯気――そんな五感すべてが刺激されるこの街で、もっとも印象的なのは、目に飛び込んでくる一面の「ピンク」。

マラケシュの建物は、驚くほど統一感のあるピンク色で彩られています。それはパステルでもなく、ビビッドでもない、どこか落ち着きのあるやさしいピンク。土に近い赤みを帯びたその色は、伝統的な日干しレンガ(ピセ)に地元の赤土が混ぜられていることに由来します。

太陽が高く昇る昼には、街は乾いた赤褐色に見え、日が傾くにつれ、建物たちはまるでバラ色のヴェールをまとったかのように輝きます。こうしてマラケシュは、「ラ・ヴィル・ローズ(La Ville Rose)」―フランス語で「バラ色の街」と呼ばれるようになりました。

しかしこのピンク色の街並みは、単なる美しさを求めたものではありません。強烈な日差しが降り注ぐモロッコの乾燥した気候の中で、この土の色は光を柔らかく反射し、まぶしさを和らげてくれます。さらに、赤土に含まれるミネラル成分は断熱性にも優れており、建物の内部を涼しく保つという、実用的な効果もあるのです。

マラケシュを訪れると、誰もがそのピンク色の魔法に魅了されていきます。迷路のように入り組んだスーク(市場)では、香辛料や革製品、カラフルなランプが所狭しと並び、歴史あるモスクの静けさや、リヤド(伝統的邸宅)の中庭の美しさに心を奪われることでしょう。

そんな中でふと見上げれば、どこまでも続くピンクの壁。どこにいても、どこを歩いても、景色の背景にはいつもこの柔らかなピンク色があり、人々の営みとともに溶け込んでいます。

現代的な都市がガラスや鉄といった無機質な素材に囲まれていくなかで、マラケシュは土と光と風が織りなす有機的な街。ここでは、色彩そのものが文化であり、記憶であり、アイデンティティなのです。

ピンクに染まるマラケシュ。

それは、旅人の心をも染めてしまう、静かで強い美しさ。

色の統一感にとどまらず、時の層が重なり合うこの街には、過去と現在が静かに呼吸をともにしているような深い時間が流れています。

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