ワセリンとアルガンオイルは、両方ともスキンケアに使用されることがありますが、それぞれ異なる性質と用途があります。
ワセリンとアルガンオイルの特徴
ワセリン
ワセリンは石油ジェリーとも呼ばれ、石油を精製して作られた製品です。非常に濃厚な保湿剤であり、水分の蒸発を防ぐために肌に保護膜を作ります。これは、肌の乾燥を防ぐために水分を閉じ込める際に特に有効です。
また、小さな傷や切り傷に対するバリアとしても役立ちます。しかし、ワセリンは単に肌の上に膜を作るだけで、肌に栄養を与える成分は含まれていません。
アルガンオイル
アルガンオイルは、モロッコ原産のアルガンツリーの種子から抽出される自然な植物油です。ビタミンE、必須脂肪酸、抗酸化物質など、肌に有益な多くの栄養素を含んでいます。アルガンオイルは肌を柔らかくし、保湿すると同時に、肌の健康を促進し、エイジングサインを減少させることが期待されています。また、アルガンオイルは非常に軽く、肌に素早く吸収されるため、肌をべたつかせることなく保湿することができます。
アルガンオイルが優れている理由
- 栄養成分
アルガンオイルはビタミンEや必須脂肪酸など、肌の健康と若々しさを維持するのに役立つ栄養素を豊富に含んでいます。 - 抗酸化作用
アルガンオイルの抗酸化物質は、フリーラジカルによる損傷から肌を保護し、老化の兆候を減少させるのに役立ちます。 - 多用途性
アルガンオイルは顔だけでなく、髪や爪にも使用できるため、トータルなビューティーケアに対応できます。 - 吸収性
アルガンオイルは肌に素早く吸収され、軽い使用感でありながらしっかりと保湿を行います。 - 非コメドジェニック
アルガンオイルは非コメドジェニック(毛穴を詰まらせることが少ない)であるため、ニキビを引き起こしにくいとされています。
一方で、ワセリンは主に保護膜を形成し、既存の水分の蒸発を防ぐため、外部からの刺激から肌を保護するのに非常に優れています。
しかし、アルガンオイルのように肌に栄養を与えるわけではありません。
ワセリンのデメリット
ワセリンは多くの人にとって効果的な保湿剤ですが、デメリットもあります。
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非透過性
ワセリンは皮膚に厚いバリアを作るため、肌の呼吸を妨げることがあります。これにより、毛穴が塞がれ、熱や汗が閉じ込められることがあります。 -
ニキビの原因
閉じ込められた毛穴は、ニキビや吹き出物の原因となることがあります。特にオイリー肌やニキビを起こしやすい肌質の人には不向きな場合があります。 -
合成成分
環境に配慮したり、オーガニック製品を好む人にとって、ワセリンは石油由来の製品であることが問題となる場合があります。 -
汚染物質
市場に出回っているワセリンの中には、精製過程で完全には除去されていない有害なポリ環状芳香族炭化水素(PAH)が含まれている場合があります。これは健康リスクを引き起こす可能性があります。 -
感覚
ワセリンを塗布した後の感触が重たく、べたつきを感じる人もいます。そのため、日中の使用には不向きです。 -
環境への影響
石油製品であるワセリンは、その原料の採掘が環境に与える影響を考慮する必要があります。 -
万能薬ではない
保湿の面では効果的ですが、ワセリンは肌に栄養を与えたり、抗酸化作用を提供するわけではなく、スキンケアの全てのニーズに応えるわけではありません。
これらのデメリットを考慮に入れつつ、自分の肌のタイプやスキンケアの目的に合った製品を選択することが重要です。
ワセリンのリスク
長年にわたり、ワセリンの使用に際しては、アレルギー性接触性皮膚炎の副作用が報告されてきました。
ドイツの消費者保護団体「商品品質テスト財団(Stiftung Warentest)」が2015年に行った調査で、ミネラルオイルを含む一部の製品に高濃度のミネラルオイル芳香族炭化水素(MOHA)が含まれていることが明らかになりました。
ヨーロッパ食品安全機関(EFSA)は、多環芳香族炭化水素類に発がんリスクがあると警告しています。
このデータを踏まえ、「商品品質テスト財団(Stiftung Warentest)」は、ワセリンやミネラルオイルを含むリップケア製品の使用を避けるよう推奨しています。
ミネラルオイルによってもアレルギー性接触性皮膚炎が引き起こされることが知られており、この反応の原因となるのは、多くの場合、芳香族化合物(aromatic compound)といった成分によるとされています。
特にミネラルオイルはワセリンと比較してエアロゾル化しやすく、そのために呼吸器系に影響を及ぼす可能性があります。
アメリカでは、この問題に対処するために労働安全衛生管理局(OSHA)が職場でのエアロゾル濃度の上限と作業時間の制限を設けています。
加えて、ワセリンやミネラルオイルに含まれる化合物が環境ホルモンのような作用を持つ可能性が示唆されています。
これらの物質は、人体だけでなく環境に対しても潜在的なリスクを持つことから、その使用と安全性について慎重な検討が求められています。