美しさの裏に隠れた真実と、本当のエシカルとは
モロッコの大地が育む「黄金の雫」
モロッコ南西部、サハラ砂漠の北端に広がる乾いた大地。
そこに何千年も前から自生し、人々の暮らしを支えてきた木があります。
それが「アルガンの木(Argania Spinosa)」です。
この木は、1本あたり約30kgの果実を実らせ、そこからわずか1リットルしか採れない希少なオイルを生み出します。
「黄金の雫」と呼ばれるアルガンオイルは、美容や健康に優れた効果を持つことで知られ、今や世界中の化粧品ブランドが注目する存在となりました。
しかし、その人気の陰で、モロッコが抱える深刻な課題が見えてきています。
世界で拡大するアルガンオイル市場と不公平な構造
国際市場におけるアルガンオイルの需要は急速に拡大しています。
2024年には世界市場規模が約3億7,500万ドルに達し、2032年には7億9,000万ドルを超えると予測されています(出典:Finance Yahoo Market Outlook)。
それほどまでに注目を集めるアルガンオイルですが、その利益の大部分は「モロッコ」ではなく「ヨーロッパ」に流れてしまっているのが現実です。
多くの多国籍企業(特にフランスやドイツを拠点とする企業)は、モロッコで搾油された“粗製オイル”を低価格で大量に買い取り、欧州で精製・ボトリング・ブランド化を行っています。
結果として、モロッコの女性たちや生産者が生み出した価値は、高級ブランドの製品ラベルと共に先進国の利益に変わっているのです。
「モロッコ産」なのにモロッコに利益が戻らないという矛盾
アルガンオイルの多くは「Made in Morocco」と表示されています。
けれども実際には、製品としての付加価値がほとんどモロッコに還元されていません。
・現地ではナッツの採取・割り作業・一次搾油だけを行い
・最終的な精製や充填はヨーロッパの工場で実施
・利益は欧州の化粧品ブランドが得る
つまり、「モロッコの資源」が「先進国のブランド利益」にすり替わってしまっている構造です。
さらに、この構造は地域社会にも深刻な影響を及ぼしています。
・女性協同組合の多くは、安い労働力として使われているだけで、十分な報酬を得られていない
・需要の増加により、アルガン樹の過剰利用・伐採が進み、生態系への負荷が高まっている
・乾燥や気候変動によって、アルガン樹自体が減少している
かつて持続可能な暮らしの源だったアルガンの木が、世界の市場の中で「搾取の象徴」になりつつあるのです。
真のエシカルとは「利益の循環」にある
“エシカル消費”という言葉は、日本でもよく耳にするようになりました。
けれども、本当のエシカルとは、単にオーガニックやナチュラルを選ぶことではありません。
それは「その製品が、誰を幸せにしているか」を考えることです。
・そのオイルは、どこの誰が搾油しているのか?
・利益は、どこに流れているのか?
・その産業は、自然や地域社会を支えているのか?
これらの問いに真摯に向き合うことが、本当の意味での「サステナブルな美しさ」につながります。
ネクタローム ― モロッコから世界へ、正しい循環を
そんな中、モロッコ・マラケシュ発のブランド「ネクタローム」は、この問題に正面から取り組む数少ない存在です。ネクタロームは、モロッコの自然療法を現代科学と融合させ、伝統と近代美容を両立するブランドとして誕生しました。
ネクタロームの特徴
・原料の厳選から製造・輸出までをモロッコ国内で完結
・自社開発の搾油機による衛生的で高品質な生産体制
・ECOCERT(エコサート)、USDA、ISO22716(化粧品GMP)認証取得
・地元農家・協同組合からの直接仕入れによる公正取引
・モロッコ人スタッフを中心とした雇用創出と地域還元
つまり、ネクタロームは「原料を売る国」ではなく、
“製品を創り、価値を守る国”としてのモロッコを体現しているのです。
欧州モデルとの違い
比較項目 | 欧州大手ブランド | ネクタローム |
---|---|---|
原料調達 | モロッコ(安価で買い取り) | モロッコ(自社・協同組合から直接) |
精製・充填 | 欧州で実施 | モロッコ自社工場 |
ブランド利益 | 先進国企業へ | モロッコ現地に循環 |
雇用 | 限定的(低賃金) | 現地雇用を創出 |
ネクタロームは、単にオイルを販売するブランドではなく、「モロッコ経済の自立」と「環境再生」を同時に支える仕組みを築いています。
消費者ができる小さな革命
私たち消費者には、大きな力があります。「何を買うか」で、どんな世界をつくるかが変わります。
・フェアトレード製品を選ぶ
・生産者に利益が還元されるブランドを応援する
・“安い”ではなく“正しい”を基準に選ぶ
これらの行動は小さな一歩のようでいて、世界の経済の流れを少しずつ変える力を持っています。
ネクタロームのアルガンオイルを選ぶということは、単なるスキンケアではなく、モロッコの森・人・文化を守るという意思表示でもあります。
美しさとは、誰かの犠牲の上に成り立つものではなく、分かち合いと尊重の中から生まれるもの。